島の宝観光連盟

小泉八雲が愛した隠岐~ゴーストツアーin隠岐~

小泉八雲とは

今回は島根県松江市そして隠岐にもご縁のある文豪の小泉八雲(出生名:ランフカディオ・ハーン)さんと隠岐について、そして11月に開催されたゴーストツアーin隠岐についてご紹介します。

八雲はギリシャのレフカダ島に生まれアイルランドにて育ち、イギリス、フランス、アメリカ、ニューヨーク(カリブ海)を経て1890年(明治23年)に39歳で日本へ訪れています。日本では松江、神戸、東京に移り住み、多くの著作を残しながら東京にて54歳の若さでその生涯を終えています。八雲は日本の風土や習慣、神道に強い印象を受け、その様子を著作の中で紹介しています。松江市での滞在の期間は1年3か月の間でしたがこの期間に妻となる小泉セツさんと出会い国際結婚をしています。

小泉八雲夫婦像(海士町菱浦)

代表的な著作には『怪談(KWAIDAN)』があり、妻のセツさんの語る民話や昔話を再話文学として執筆しています。この『怪談』にて描かれる「雪女」や「耳無し芳一」の話は、日本人であれば多くの方が知っているのではないでしょうか。またこのように怪談を再話した文学の他にも翻訳、ルポタージュ紀行、小説、随筆など多くの分野で約30冊の著書を執筆されています。

また、著書『知られざる日本の面影』では、明治時代の産業革命の中に変化しつつある日本の原風景を紹介しており、現在も多くの海外ファンが著書に親しみ、ゆかりの地である日本・松江市にも多くのファンの方が訪れています。

隠岐と小泉八雲

八雲は妻のセツと共に隠岐へも来島し、隠岐の島町の西郷、西ノ島町の浦郷、海士町の菱浦に立ち寄っています。隠岐については著書『伯耆から隠岐へ』にて執筆されています。

八雲は隠岐の中でも特に海士町の菱浦を気に入っており、鏡のように穏やかで美しい入り江を「鏡浦」と名付けて親しんでいたようです。海士町にて滞在していた岡崎旅館の跡地には、小泉八雲夫婦像と八雲のお気に入りだったヤタガラスの銅像が置かれています。今ではこの場所は八雲公園と呼ばれ地域の方に愛されています。また海士町滞在中には、子供の神葬祭(※1)にも出会っており、その時に島民から聴いた「生まれ変わり」についての話は『怪談』にて紹介される生まれ変わりの物語である「力(りき)ばか」にも影響を与えています。

※1神葬祭:神道に基づいて行われる葬儀

八雲の愛した鏡浦、ツアー翌日も鏡のように穏やかで美しい水面。

松江ゴーストツアーと「ゴーストツアーin隠岐」

2024年は、小泉八雲の代表作『怪談(KWAIDAN)』が出版されて120年、そして八雲の没後120年にあたる節目の年であり、松江市で様々な記念イベントが行われているなか、隠岐でも初めての企画としてゴーストツアー出張版の「ゴーストツアーin隠岐」が行われました。ツアーは海士町にて夕暮れからスタートし、妖怪が岩になったと伝えられる七尋女房岩(ななふろにょうばいわ)や後鳥羽上皇をお祀りする隠岐神社、八雲夫婦像のある八雲公園などを巡りながら、怪談や逸話、八雲が海士町に訪れた際のエピソードを小泉凡さん、語り部さんから語り聴く内容となっておりました。

自然の薄暗闇の中、ゆかりのある場所で怪談に耳を傾けることでより互換が研ぎ澄まされ、普段とは違った隠岐の魅力を感じるツアー内容でした。

七尋女房岩とよばれる大女の妖怪が岩になった怪談の残るスポット

ゴーストツアーでは単純に恐ろしい怪談話を語るというだけの内容ではなく、八雲が感じていた怪談の中ににある一種の真理、普遍性を意識した内容にもなっています。怪談の一つ「飴を買う女」という話では、生きながらに埋葬されながらも子供を産み、その子供の為に毎夜幽霊となって水飴を買いに来る母の様子が語られます。まさに「母の愛は死よりも強い」という一つの真理が感じられる物語です。

ツアー時間は妖怪と出会いやすい夕暮れ「黄昏時」から

注目の高まる小泉八雲夫婦とゆかりの地~山陰・隠岐~

2025年に放送されるNHKの朝の連続ドラマ「ばけばけ」には、八雲の妻であるセツさんが主人公のモデルとして取り上げられることも決まっています。松江の小泉八雲記念館では今年の6月から来年の6月8日まで「小泉セツ—ラフカディオ・ハーンの妻として生きて」の特別展示もされています。ぜひこの機会に八雲夫婦に惹かれ、山陰への旅行を検討されている方は松江ゴーストツアーのご利用や、さらに足を延ばし八雲の愛した風景のある隠岐の島へのお立ち寄りもぜひご検討くださいませ。

また、今回のゴーストツアーin隠岐の舞台ともなった島前海士町では地域通貨として「ハーン」という八雲の出生名「ラフカディオ・ハーン」に因んだ紙幣があります。海士町を訪れた際にはぜひ記念としてご利用されてはいかがでしょうか。